概要
1919年に設立された南開大学は、学術的に名高い大学です。長年にわたり、南開大学は「学府北辰(中国の高等教育機関の中の「北極星」的な存在)」と謳われており、多くの学術エリートを招致し、いつの時代も学生に刺激を与え、感化を及ぼし、中国の大学教育のロールモデルのような存在です。南開大学は社会へ影響を与えることを目的としており、多数の成果を上げ、社会経済効果をもたらしました。
南開大学の沿革
南開大学は、有名な愛国主義教育家である張伯苓氏や厳秀氏などによって1919年に設立された大学です。当時は五四運動の勃発寸前、中国全国が存亡の危機に陥っていました。第二次世界大戦中(1937-1945)、南開大学は存続をかけて中国を縦断する数千キロメートルの長旅に出ました。日本軍の空襲にも恐れず、昆明(雲南省)に移った南開大学は、北京大学や清華大学と合併し、西南連合大学を設立しました。三大学とも優秀なる教師陣を抱えており、多数の著名な科学者や愛国革命家を世に送り出しました。
1946年、戦争の終結に伴い、南開大学は天津に戻り、国立大学になりました。張伯苓氏が学長を務め、1980年代にはすでに文系と理系のある総合大学となりました。当時は数学、物理、生物、化学、中国語、外国語、哲学、政治、経済、歴史の9つの学部からなっていました。
中華人民共和国成立後、教育部と天津市人民政府の支持の下、南開大学は研究型大学に発展し、「985」や「211」などの重点建設プロジェクトに入選しました。
2015年9月、新キャンパスが開設され、南開大学は八里台、津南、泰達(TEDA)の「三キャンパス」体制が整備され、総敷地面積は445.19万平方メートルにも達しました。
2017年9月、南開大学はA級大学(中国全国で36校)に入選し、ほかの41校とともに世界一流大学の仲間入りを果たしました。
過去100年の間に、南開大学は終始、国と運命をともにし、社会の進歩と共に発展してきました。「本学は公共的価値の創出、スキルアップ、革新(イノベーション)を重視しております。これらはすべて南開スピリッツの一部なのです」と曹雪濤学長は語っております。現在、「卓越南開づくり」という計画の下で、これらの核心的思想は南開大学の進むべき道しるべとなっています。
人材育成能力
南開大学にとって、「公共的価値の創出、スキルアップ、革新(イノベーション)」は教育の三本柱です。3万人以上の学生に、幅広い学問分野をカバーした良質な学習環境や、学際的イノベーションを含む「学問の自由」を提供することが、南開大学の基本主旨であります。人気講義を生み出すために、南開大学は世界一流の研究者たちに、学部教育に参加するように呼びかけています。南開大学には26の学院、92の学部専攻、28のポスドク研究センター、31の博士号授与プログラムがあり、中国全国においても、最も全面的な総合大学の一つだと言えます。中国政府の「双一流」計画に入選しただけでなく、化学、材料科学と工学、数学、統計学と世界歴史学科は「双一流」学科に評定されました。
南開大学の学部生は科学研究イノベーションコンテストで何度もチャンピオンを獲得しました。起業も奨励されており、学生が創設したベンチャー企業は資金援助を受けるチャンスもあります。
また、南開大学は学生に様々な現地調査や実習の機会を提供しており、大学で学んだ理論や知識を実践に生かし、社会的責任を担うように奨励しています。南開大学は、教育を礎とする公共精神(公徳心 ・ 公共心 )を発揮するために、実地調査と社会奉仕活動を組織し、中国の未発達地域の貧困扶助活動に取り組んでいます。
1世紀の発展を経て、南開大學は多数の著名な卒業生を世に送り出しました。中華人民共和国の初代総理である周恩来氏、中国の農薬化学・有機元素化学の創始者である楊世賢氏、数学者である陳世深氏、物理学者である呉大猷氏、劇作家である曹禺氏、二弾一星の主な貢献者の一人である郭永懐氏、地質学者である劉東生氏……みな南開大学を卒業しキャリアをスタートしました。
持続的なイノベーション
創立から百年祭までの百年もの間、南開大学の研究者たちは絶えずに科学研究に取り組んできました。研究に取り組む伝統がある南開大学は、近年下記のような多数の新たな突破を実現しました。
−天宮1号、天宮2号などの宇宙機有害ガス探査技術を利用して、有人宇宙事業の発展を推進。
−ロボット技術を用いた細胞マイクロオペレーションにより、世界初のロボットクローン豚が誕生。
−有機太陽光電池の開発によって、太陽光−電力変換効率の新記録が誕生。
−炎症免疫反応の新たな分子メカニズムを発見し、免疫治療の進展を促進。
−脳膠腫(脳腫瘍の一種)の治療に使える天然産物を効率的に合成。
-自動化ブリッジクレーンシステムの開発によって、作業効率や安全性が大幅に向上。
これらの研究成果により、南開大学は2019年の中国自然指数年間ランキングのトップ10に入り、世界の学術機関の中で47位、さらに化学系は10位にランクインしました。2018年、南開出身の8人の学者がClarivateの「論文における被引用数が一番多い研究者」に選ばれました。過去10年間、SCIに発表された論文は中国国内で被引用数の上位にランクインしました。
南開大学は一流の学術的実力とイノベーション精神を持っており、年齢や学科に面においてバランスのとれた教師陣を抱えています。現在、2153人の教員・職員を抱えており、そのうち博士後期課程指導教員822人、修士課程指導教員770人、教授864人、准教授840人となっています。内訳、中国科学院院士11人、中国工程院院士3人、国家ハイテク研究開発計画(863計画)首席科学者3人、国家基礎研究計画(973計画)首席科学者15人、国家重点研究開発計画リーダー17人となっています。8人の教師が教育部の大学優秀講師に選ばれ、8人の教師が教育部優秀青年教師賞を、28人の教師が国家青年自然科学基金を受賞しました。
国家レベルの科学研究教育センターとして、南開大学には21の自然科学国家級重点研究機構、7の社会科学国家級重点研究機構があります。そして2の国家級重点実験室、7の教育部重点実験室、1の国家環境保護総局重点実験室、20の天津市重点実験室、14の教育部工程センター、4の天津市工程センター、9の国家級基礎科学研究と人材育成基地があります。
積極的に科学研究の最前線に立ち、自己変革とイノベーションを通じて、新天地を切り開いております。
「卓越南開づくり」計画の一部として、南開大学は自然科学、人文科学、社会科学の面における既存の優位性を発揮し、工学と生物医学の面における優位性を強化し、新興の学際分野における発展を推進し、国家戦略の課題の解決を図ってまいります。
いざ、南開から世界へ
南開を世界一流大学にすることは、南開の創始者たちの最終目標でもあります。開校初期、南開大学は多くの世界的な学者を引きつけ、多くの著名な出身者を世に送り出しました。
1980年代、中国の改革開放に伴い、有名な数学者、「現代微分幾何学の父」と謳われる南開大学出身者の陳世珅氏や、中国古典詩詞を研究する学者である葉嘉瑩氏など、世界的にも有名な学者を海外から本学に招致しました。南開大学は国際学術界との連携を強化し、世界的な影響力を高めてきました。
2016年、南開大学は「グローバル南開」計画を立ち上げ、人材育成、教師、研究、キャンパスをより国際化することで全世界で名をあげることを目指しています。南開大学創立百年の2019年、「卓越南開づくり」計画をスタートさせ、世界一流大学へ邁進し始めました。社会の発展への貢献は中国に限りません。科学に国境がないように、南開大学のサービスやインセンティブにも国境はありません。
南開大学は諸外国の320以上の大学や学術機関と交流・協力関係を結んでいます。そして日本、イギリス、ポルトガル、韓国、ブラジルなどの8の国や地域で孔子学院を設立しました。また、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、バーミンガム大学、韓国SKホールディングスと連携して、4の国際共同研究センターを設立しました。また、ダボス世界大学リーダーシップフォーラムにも参加し、「天津フォーラム(2017)」を主催しました。公立大学国際フォーラム事務局を設置しており、中国政府漢語弁公室に新国際漢学研究計画の参加大学に選ばれました。
公共サービス
社会に福祉をもたらすことは南開の教育・研究プログラムの重要な構成部分でもあります。南開大学の創始者である有名な教育家の厳修氏や張伯苓氏は、現代教育の導入によって中国の振興に貢献しようと考えていました。
1919年に南開に入学した中華人民共和国の初代総理周恩来氏、中国の現代力学と航空学の父である空気力学専門家郭永懐氏など、南開大学は多数の著名な卒業生を世に送り出しました。
哲学者、劇作家、「世界人権宣言」起草委員会の中国代表である張澎春氏、中国経済研究のパイオニアであるフランクリン氏など、1920年代~1930年代、南開大学は当時尊敬されていた学者たちを教員として招致していました。革新精神に富んだ教師たちとその学生たちの努力によって、南開大学は現代思想、文化、科学の中心地となりました。
戦時中、南開大学は北京大学、清華大学とともに中国の南西部に移り、三大学で国立西南連合大学を設立し、ノーベル物理学賞受賞者ー楊振寧氏、李政道氏などの人材を育成しました。そして中華人民共和国成立後、南開大学は再び天津市に戻り、積極的に教育改革を行いました。
これからも、「校風を発揚し、人材を育てることに取り組み、質の高い大学づくりを強化し、人材で大学を強くするための6大戦略を展開する」という核心的価値観を実践してまいります。学術建設、教育の質および科学研究のイノベーションを強化し、天津の浜海地区を立ち位置として世界に目を向けて、世界一流大学づくりという目標に邁進してまいります。